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喪失感を埋めるのは満足感

 私は、数カ月前まで、訪問診療でたくさんの患者さんのお看取りに携わりました。在宅で亡くなる患者さんの多くは、がん末期や老衰の方がほとんどでした。在宅医療の対象は最期のお看取りだけではなく、病院に通院できなくなった方で自立した生活をされている方も多いのですが、誰でも最終的には終焉のステージを迎えることになります。誰でもたどる道ですが、患者自身が望む場所で最期を迎えられれば最も幸せなことだと思います。自宅だけでなく、病院や介護施設を選択する方もいるでしょう。特に自宅を希望され、家族に見守られながら逝く方は家族との密接な時間を過ごすため、ご本人は幸せなのですが、ご家族のぽっかり空いた喪失感は大きいことが予測されます。そんなご家族のお言葉で共通する言葉が「満足感がある」です。ご家族の様子から、満足感が喪失感を埋めることになっているに気づかされます。家族は、治療により患者さんが苦しむ様子を見ることなく、最期まで言葉を交わせ、穏やかな最期を迎えることで安心し、肯定感に満たされます。「自分は何もできなかった」ではなく、やりきったという実感を持っていただくためには、看護師やケアに携わる多くの関係職種の関りが重要になります。私たちは、家族や患者さんの小さな望みを叶え一緒に喜ぶ過程を幸せに思います。「ビールを飲んだらおいしいと言ってくれた」、「最期にお風呂に入れてもらってよかった」、「デパートに買い物に連れて行ってもらってうれしかった」と家族が満足できるサービスを提供していきたいと思う日々です。

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